はじめに
その日も私は、ロッドとわずかなルアーを手に「かっこいい魚」ブラックバスを釣るために、国鉄尼崎駅から始発電車に乗り込んでいた。
当時の始発は電車ではなく汽車。前後の階段を踏みしめ、手動で扉を開けて座席に腰を下ろす――そんな行為そのものが冒険の始まりだった。
今では廃線となった福知山線は行楽の時期にはウォーキングで訪れる人も多いが、私にとっては少年時代の大切な記憶そのものだ。
宝塚を越えたあたりで窓の外に広がる武庫川渓谷。あの景色が、少年だった私の心をどれほど躍らせてくれたか。
今では近くに思える距離も、あの頃の私にとってはまさに“大冒険”だった。
還暦を前に、思うこと
1965年生まれの私も、今年の誕生日で還暦を迎える。
人生の4分の3ほどを生きてきたことになる。
これまでブログもいくつも書いてはやめ、始めては消し…を繰り返してきた。
飽き性だからではない。ただ、生きていればいろんなことが起きるのだ。
それでも、これまでの記憶は決して色褪せず、今も鮮やかに息づいている。
2025年2月25日――この日も私は生きている。
先日、放置していたワードプレスを一度削除し、新しくインストールし直した。理由は特別なものではなく、「もう一度、自分を見つめ直したい」と思ったからだ。
写真に刻まれた記憶

引き出しの奥に眠っていた、古い写真たち。
フィッシングサロン心斎橋で買った2ピースのレスターファインのロッドとスピンキャストリール。なぜそれを選んだのかは覚えていないが、後にブラックバスを釣り上げた瞬間、真っ二つに折れてしまった。
小学6年か中学1年の頃。
たった20センチのケタバスでも、1日中釣れなかった帰り道にヒットしたその1尾が、どれほど嬉しかったか。今でもはっきり覚えている。
変わらぬ「好きなこと」
あれから50年近くが経った。
それでも変わらない「好きなこと」がある。
それは――「車と釣り」。
商店街の入り口にあった「フジイカメラ」で買ったリコーのオートハーフ。夢中でシャッターを切ったのは、街角で出会ったポルシェだった。
なぜだか昔からポルシェが大好きで、ファインダー越しに見つけるたび心が高鳴った。
大阪のモーターショーでは、フェラーリも並んでいたはずなのに、私はランボルギーニだけを撮影していた。50年経った今見ても、やっぱりかっこいい。

そして釣りのほうも、武田尾や三田から東播・加古川方面へと行動範囲を広げ、寝袋やカップ麺を背負って野宿しながら釣りに明け暮れた。
ようやく釣り上げた38センチのブラックバス。凍える夜、震えながら手にしたその1尾は、今も忘れられない。

50年後の自分へ
――約50年前の僕へ。
あの38センチのブラックバス、本当に嬉しかったね。
夢中でリールを巻いたら、ロッドが折れてしまった。お気に入りのルアーと一緒に写真を撮っている姿、今見ても可笑しくて愛おしい。
その時の喜びが、今も変わらず私の心に残っている。

我がままに生きる
こうして、釣りと車に夢中になった少年は、還暦を迎える今も「GT3RSが欲しい」と願っている。
子供の頃と変わらない気持ちのまま。
還暦間近の私は、ただひとつ強く思う。
我がままに、人生を歩んでいきたい。