08/15/2026 KatsuSera

速さを手放した日の静けさ

Slow roads, old graves, and letting go

お盆の渋滞を避けるつもりで一般道に入ったのに、DEFENDERは狭い道が苦手だった。対向車が来るたびに肩に力が入り、コーナーでは車体の大きさを持て余す。早く走ろうとすればするほど、何かに追い立てられているような感覚になる。

だから諦めた。

ゆっくり走ることにした。すると不思議なことに、心がすうっと落ち着いた。車窓の景色が初めて目に入ってくるような気がした。田んぼの緑、古い商店の看板、信号待ちで立つ小学生。飛ばしていたら何も見えなかったものが、そこにあった。

冷静に計算してみれば、高速を使ったとしても牛窓まで片道で15分変わるかどうかだ。その15分を稼ぐために事故のリスクを引き受け、あるいは切符を切られてしばらくハンドルを握れなくなる。どう考えても引き合わない。速さとはそういうものだ。得ているものより、失っているものの方がずっと多いことに気づかないまま、人はアクセルを踏み続ける。

— 三田の墓参りの前日、母を連れて尼崎の実家の墓へ向かった。久しぶりの尼崎は、変わったようで変わらない独特の空気をまとっていた。古い街が持つ、時間の堆積のような匂いとでも言えばいいか。お墓の周りだけが少し整備されて、清潔になった気がした。

帰りに枡千で蒲鉾を買った。いつの間にか尼崎の名物になったらしい。母が嬉しそうに包みを持つのを見ていたら、墓参りというのは死者に会いに行く行為でありながら、生者が互いを確かめ合う時間でもあると思った。

— 少し早いと知りながら、2027年のスケジュール手帳を買った。新しいノートを開く瞬間の、あの清潔な感触が好きだ。何も書かれていないページには、まだ起きていないすべてが詰まっている。

同じ日、長年続けていたYahooストアの解約申請を終えた。9月末には店を閉じる。ホームページもメールアドレスもドメインも、順番に削除していく。終わらせることと、始めることが同じ日に並んでいる。

人生はだいたいそういう構造をしている。何かを手放さなければ、次のページは開かない。 速く走ることをやめたとき、景色が見えた。一般道を諦めてゆっくり進んだあの午後を、しばらく忘れないと思う。

自分のやりたい事だけに執着したい。

,

``Nature does not hurry,
yet everything is accomplished``

Catch the Moment, Chase the Tide