五月の終わり、初めてDEFENDER OCTAで牛窓を往復した。
アプリに残った数字は正直だ。行き9.2km/L、帰り7.7km/L。GLE450の約半分。コーナーの安定感も直進性も、慣れ親しんだGLEの方が上だと感じた。クルーズコントロールも、レーンキープも、オートで流す快適さはメルセデスに軍配が上がる。ダイナミックモードにすればDEFENDERのコーナリングも締まってくるが、同じカーブをGLEより時速20kmほど落として進入しないと不安感がある。同じコーナーで、20km。その差は小さくない。
だからといって、この車を見誤ってはいけない。
20インチのトレイルタイヤを履いたクロスカントリー四駆を、コンチネンタルのロードタイヤを履いたラグジュアリーSUVと同じ土俵で比べることに、そもそも無理がある。GLE450は舗装路の王者として生まれた。DEFENDER OCTAは、別の文脈で生きるために作られた獣だ。
牧場の泥、川底の石、雨に濡れた獣道。そういう場所で初めて、この車の本当の顔が現れる。今日の往復は、いわばスーツ姿の格闘家に「ダンスが上手くない」と評したようなものかもしれない。
それでも、正直に書いておきたいことがある。
外から眺めたOCTA BLACK の存在感は圧倒的だ。運転中は自分の車を見られないのが惜しいほど、あのシルエットには凄みがある。Eクラス、GLEに乗り続けて、メルセデスのインパネに飽きていたのは確かだ。しかし正直なところ、OCTAのインパネにも同じ種類の物足りなさを感じている。これは私だけだろうか。価格はGLE約2台分。OCTA BLACKのスペックシートに見合うだけの感動を、インテリアから受け取れているかというと、まだ答えが出ていない。
車とは、時間をかけて付き合うものだ。
最初の印象が全てではない。むしろ、第一印象で分かり合えない相手の方が、後になって深く刺さることがある。人でも、土地でも、車でも。
ひとつ気になることがあった。納車されたばかりの新車のマフラーが、すでに錆びていた。六月の初めに交換してもらえることになったが、この一点だけは素直に腑に落ちない。価格帯の話ではなく、矜持の話として。
それでもこの車はきっと、泥だらけになった時に笑う。荒れた路面で初めて、その本領を見せるのであろう。舗装された道の上では借りてきた猫のように大人しく見えるが、獣の目は光っている。
その日を、楽しみに待っている。