07/09/2026 KatsuSera

暇という名の豊かさ

Stillness between the noise of days

暇だ、と思った。

しかしその言葉を口にしかけて、すぐに首をかしげる。仕事はしている。病院で一日を費やした日もある。息子から相談の連絡が来れば、牛窓への計画をためらいなく畳む。それのどこが「暇」なのか。

おそらく、隙間が生まれたのだ。

かつては隙間などなかったのかもしれない。次の予定、次の締め切り、次の数字、そういったものが絶え間なく押し寄せて、立ち止まる間もなかった。それが今は、朝起きてカーテンを開けて、まずレスターの顔を見て、空の色を確認する余裕がある。変わらないのは朝の散歩ぐらいで、電話一本で行き先を変えても誰にも迷惑をかけない。これを暇と呼ぶのは、少し違う気がする。

身の回りの整理をした。長年持ち続けていたカードを一枚解約した。契約の見直し、不要なものの棚卸し。削ぎ落とす作業は、どこか清々しい。ところが同じ日、セール中のスピーカーをカートに入れてしまった。JBL、前から気になっていたやつだ。整理と購入が同居する、人間らしい矛盾。それもまあいい。音楽があれば、一人の時間はずっと豊かになる。

ワールドカップの深夜観戦で体が鉛のように重い朝があった。誰かに説明する必要もなく、ただ重い体を引きずってコーヒーを淹れる。あの熱狂を、画面越しでも共有できたことのほうが価値がある。

ドル円が162円を超えた。来期の見通しは厳しい。為替介入のタイミングを読もうとしても、相場は人の思惑などお構いなしに動く。それでも円売りは続くのか。考えれば考えるほど霧は深くなる。だから考えながらも、過度に飲み込まれないようにしている。数字は事実として受け取る。感情の燃料にはしない。

先日、前を向いて踏み出そうとしている人と話した。その姿を見ていると、不思議と自分のなかに何かが灯る。応援というよりも、共鳴に近い。誰かが動こうとしている、その意志の重さに触れると、こちらの景色も少し変わる。

暇な日々と、慌ただしい夜と、為替の荒波と、息子からの電話。それらがぜんぶ、今という時間を構成している。特別な日など一日もないかもしれないし、全部が特別なのかもしれない。

淡々と、しかし確かに、日は積み重なっていく。

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``Nature does not hurry,
yet everything is accomplished``

Catch the Moment, Chase the Tide